しじま台の家

家族の絆と社会との調和が見える家。

豊かさの意味が「物」から「心」へと変化している今、住まいに対する考え方も見直され始めている。心豊かに過ごしたい、自分らしく暮らしたいと考える延長線上には、現代人の人生観のようなものが見えてくるようだ。
金沢市郊外の『しじま台の家』も、施主の生活信条が反映された個性溢れる一軒といえよう。設計にあたり、建築家の竹中健次氏がまず念頭に置いたのは、地域との関わりであった。家は本来、個人のものであるが、社会を形成する一部の要素でもある。そう考えた氏は、プライベートを守りながらも町に対して開かれたデザインの構築を心掛けたという。それは建築奥に位置する中庭を眺める楽しみを、道行く人と共有するという形でも表れている。
一方、内部は、「家族と過ごす団欒のひとときを大切にしたい」という施主の要望を踏まえ、居間にポイントを置いた空間づくりが行われた。結果、採用されたのがスキップフロアプランである。居間を玄関やウッドテラスと共に中二階に設けることで、ゆったりとした天井高を確保し、さらに、中庭をコの字型に囲む構造とすることで、室内に光を効果的に採り込んでいる。また、巧みなライン構成が空間にリズムを生み出し、実際の面積よりも広く感じられるよう工夫。様々な素材の組み合わせも興味深く、どの部屋にも快適な住み心地が提供されている。
最近では当たり前のようになった子供部屋のテレビは、この家にはない。プレイルームと名付けられた共有部分で兄妹が一緒に過ごすのである。居間では夜更けまで家族の楽しい会話が弾む。町並みと調和する家のあり方と同様に、個を尊重しながらも、どこかでしっかりと繋がる家族の絆が見えてくるようだ。

(金澤 KANAZAWA STYLE 「スタイルのある空間」より/2002年7-8号)

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