住まい手の循環

リフォームを見せる人気番組「大改造!!劇的ビフォーアフター」に、「匠 住空間のライフプランナー」として出演した。 石川県七尾市の港町で一人で暮らしながらお好み焼き屋を営むおばあちゃんのために、娘らが親孝行をしようとリフォーム費用八百万円を出した。 二月上旬に番組の制作会社から打診を受け、請け負うことになった。
築百年以上の古い家だ。現在と違い昔は木を切り出すのが大変で輸入木も少ない中で、取り壊した家の使える木を再利用することが多かった。 おばあちゃんの家に古材を再利用した跡があり痛みも相当で難しいリフォームだった。娘さんが、亡くなった父親の年齢と全く同じ三十八歳になって、枕元に父親が現れて母親の家のリフォームを思い立った話を聞いた時は背筋がぞくっとした。
「これは 気合いを入れなければ。いいのにしてあげたい」と強く感じた。おばあちゃんの家は、前田利家が初入城した七尾城の城下町にある。「クラシックモダン」をデザインコンセプトにし、テーマは「城下町の再生と住宅の代謝」として設計に取りかかった。
おばあちゃんの店を続けたいとの意向に沿ったが、将来仕事を辞めても住み続けたいと思えるよう、孫と過ごすことのできるリビング、子や孫が泊まっていける空間を心がけた。『住まう』ことに主眼を置いて、築百年以上というクラシックさの中に現代性を融合させた。
住まいは 新しくすることだけが能ではない。より重要なのは何代にもわたって住み続けられることだ。金沢の城下町の長屋には住まい手の循環があった。住まい手は入れ替わり循環しながらも長屋は存在していた。その視点は戦後、欠落してしまった。戦後の都市計画は、世代交代を含む町の住まい手の循環を考慮しなかった。
金沢郊外や隣接する自治体には老人しか住まなくなった団地、誰も住まなくなった団地がある。私はそれらをジプシー団地と呼んでいるが、郊外へ居を移す都市計画には高齢化社会や交通弱者への配慮は見られない。金沢の町中に人通りが少なくなっているのは、こうした都市計画の果てに町中に人が住めなくなったからだ。
移転した石川県庁の跡地利用問題が議論されている。最悪の事態は公園になることだ。昨年、金沢市中心商店街まちづくり協議会青年部が提案した県庁跡地利用の設計を請け負ったが、県庁跡地には若い人も生活できる住空間を整備するのがふさわしい。定住人口が増えれば商業地もにぎわう。観光客もそういうにぎわいに引きつけられる。
歩いて買い物できる町、何代にもわたり生活できる町。町づくりに欠かせなくなっている視点だ。おばあちゃんの家には頻繁に孫が来るようになった。おばあちゃんの家のリフォームでは住まい手の循環を意識した。おばあちゃんの孫があの家を継いでくれる日が来るのではないかと思っている。
(北陸中日新聞/2003年8月18日)

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